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入選者のその後

経済産業省商務情報政策局長賞作品
『カーレース』インタビュー


前回に引き続き、第31回U-20プログラミング・コンテストにおいて経済産業省商務情報政策局長賞を受賞した作品の製作者とその関係者の方にお話をお伺いしました。今回は『カーレース』の顧問の先生・保護者の方・製作者の方に受賞の経緯やその後についてお話をお伺いしました。

受賞作品紹介

『カーレース』は、愛知県高浜市立高浜中学校2年の木下拓己さんの作品で、対戦型レースゲームです。詳細は入選作品紹介のページをご覧ください。

写真『カーレース』

第31回U-20プログラミング・コンテスト
経済産業省商務情報政策局長賞受賞作品
『カーレース』

写真 木下拓己さん

愛知県高浜市立高浜中学校2年 木下拓己さん

 

顧問インタビュー

『カーレース』を制作した木下拓己さんの顧問である源内啓将先生にお話をお伺いしました。

―― 今回、木下さんにU-20プログラミング・コンテストへの参加を勧められたきっかけをお聞かせください。

「5年前に、U-20プログラミング・コンテストで中学生の作品が受賞したのを知りました。中学生の作品でも評価していただけると思い、本校の生徒に参加を促しました。ここ5年間で、通算3回受賞させていただいています。」

―― 毎年ご応募いただいている理由をお聞かせいただけますでしょうか。

「本校のプログラミング部(旧パソコン部)では、生徒自ら目標を定めて活動しています。しかし、時として生徒たちは何をするべきかを見失ってしまうことがあります。本コンテストへの参加を目標にすることで、多くの生徒のモチベーションが持続できました。もちろん、部活動の目的がコンテスト入賞そのものというわけではありません。U-20プログラミング・コンテストは、生徒にとってわかりやすい目標となるため、大変有り難いと思います。」

―― 今回、部員の中から数名の生徒さんにご応募いただいたわけですが、源内先生が応募を勧められた部員の中に木下さんがいらっしゃったのはなぜでしょうか。

「U-20プログラミング・コンテストは、新しいアイデアが盛り込まれ、多くの人が利用できるような作品を望まれています。本校の部員は、自分の興味関心だけに基づいて作品を作ることが多く、また、中学生なので既製の作品を真似る段階でもありますから、『皆に利用してもらう作品』という発想ができるだけのゆとりはあまりありませんでした。しかし、木下君の作品は、未完成の段階から部員同士で遊び、色々な意見をフィードバックしながら今の形になっていきました。結果として、中学生が校内で関わり合うためのコミュニケーションツールになり得ました。同級生からは『彼らは日頃何をやっているんだろう?』と思われがちだった部の雰囲気を打開できるきっかけになりそうなゲームになりました。範囲こそ限定的ではありますが、U-20プログラミング・コンテストの主旨にも沿っているのではないかと考え、参加を促しました。」

―― 木下さんの作品作りにあたっての指導方針をお聞かせください。

「思い立ったら何でも試すことができるように、なるべく自由な環境を整備した、ただそれだけです。新しい事(処理)が実現しかけていそうな場合、それをどうやって実現しようとしているかを聞き、彼らなりの言葉で説明させるようにしています。たとえ、それが合理的な方法でない場合でも、まずは思った通りにやらせています。その上で、中学生にも理解できそうなアルゴリズムなどを必要に応じて紹介することもありますが、原則何も教えていません。」

―― 自らの試行錯誤こそが重要である、という指導方針なのですね。木下さんがどうしても行き詰ってしまったとき、どのようにアドバイスをされましたか?

「『どんな方向を向いていても弾の速度が一定になるようにしたい』など、中学数学で未習の内容(例えば三角関数の利用)を用いるべき箇所などはアドバイスします。多くの場合、行き詰まっても生徒同志でああでもないこうでもないとやり合っていますので、私がアドバイスする隙がありません。」

―― 最終審査会で、U-20プログラミング・コンテスト実行委員会をはじめとする大勢の前で自身の作品をプレゼンテーションする木下さんを見て、どのように思いましたか?

「教室で同級生を前にして発表するだけでもガチガチに緊張するタイプなのですが、当日はなかなか堂々としていて、頼もしかったです。」

―― 入選後、木下さんに変化はありましたか?

「自分を周りにアピールする自信が少し生まれたように思います。来年もU-20プログラミング・コンテストに参加したいと言っています。来年は私が促さなくても自分で応募すると思います。」

―― 今回の木下さんの入選は、今後貴校にどのような影響を与えると思いますか?

「本校生徒の『コンピュータが使える』ということについての認識の幅は広くなると思います。つまり、『アプリケーション』は既製品を入手するだけでなく、創ることもできるのだという当たり前のことが、部員の活動を通して知ることができると思います。」

―― 今年で31回目を迎えたU-20プログラミング・コンテストに、一言お願いします。

「一昔前は、『マイコンBASICマガジン』に代表されるような、プログラマーの卵が憧れる、誰もが知っている晴れ舞台がありました。今はインターネットを通して、いつでも発信することはできますが、逆に『多くの人に注目される場』は少なくなってしまったように思います。そのような場を提供していただけるU-20プログラミング・コンテストには、今後も継続していただきたく思います。」

保護者インタビュー

『カーレース』を制作した木下拓己さんの保護者の方にお話をお伺いしました。

―― U-20プログラミング・コンテストに入選してのご感想をお聞かせください。

「プログラミングを初めて1年半程でしたので、正直驚きました。部活動の顧問の先生や仲間のみんなから、いろいろと教えてもらいながら作った作品がこういった形で評価されて嬉しいです。」

―― 入選後、お子さんに変化はありましたか?

「以前より、パソコンをしている時間が増えました。『カーレース』を改良したり、別のゲームを作ったりしています。また、今まではHSPしか使っていなかったのですが、他のプログラミング言語にも興味を持ち始めたようです。」

―― 最終審査会で、自分の作品をプレゼンテーションする拓己さんをご覧になり、どのように思いましたか?

「人前で発表をするのが苦手な子でしたので、プレゼンテーションはとても心配でした。でも当日はすごく緊張したと思いますが、質疑応答にもきちんと答え、上手に出来たと思います。」

―― 拓己さんがプログラミングに興味をもつよう、幼少期を含めて教育に気をつけたことはありますか?

「特にはありませんが、小学校2〜3年生の頃からパソコンに興味を持ち始めたので、ある程度好きに使わせるようにしました。」

―― 今年で31回目を迎えたU-20プログラミング・コンテストに、一言お願いします。

「今回初めてこのコンテストを知りました。自分でプログラミングした作品を発表する機会があることは、新しいモノ、いいモノを作ろうと思うきっかけになるので、これからも続けて欲しいと思います。」

制作者インタビュー

『カーレース』を制作した木下拓己さんにお話をお伺いしました。

写真 木下拓己さん

写真 『カーレース』のプレゼンテーション

第31回U-20プログラミング・コンテスト最終審査会にて『カーレース』のプレゼンテーションを行う木下拓己さん

―― この度は入選、おめでとうございます。木下さんは、どのようなきっかけでプログラミングに興味を持たれたのでしょうか?

「小学生の頃からパソコンを触るのは好きでした。そのうちにプログラミングにも興味が沸いてきました。入学した中学校にプログラミングを主な活動としている部活動があったので、入部することにしました。」

―― では、部活に入って初めてプログラミングに触れたのですか?

「はい。」

―― 部活では、みなさんどのように活動されているのでしょうか。

「1年生から3年生まで合わせて10人の部活です。基本的には1人で作品作りをします。顧問の先生から課題が出されるということではなく、自分が作りたいものを作ります。」

―― 木下さんは今2年生で、プログラミングを始めたのが部活に入ってからということなので、プログラミング歴は1年半程度ということになりますが、今まで何作品ぐらい作られましたか?

「十数個です。『カーレース』はゲーム作品ですが、ゲーム以外にも時計やカウンタなども作りました。」

―― 今回、U-20プログラミング・コンテストに応募するにあたり、顧問の先生からどんなアドバイスをもらいましたか?

「応募する1週間前ぐらいに、『シューティングの要素も入れたら面白くなると思う』というアドバイスをいただきました。」

―― U-20プログラミング・コンテストで入選したことに対する周囲の反響はどうでしたか?

「同じ部活の人だけでなく、同じ学年の人にも『すごいね』と言ってもらえました。」

―― U-20プログラミング・コンテストの最終審査会では、『カーレース』のプレゼンテーションをしていただきましたが、そのときの心境はどうでしたか?

「プレゼンテーションをするのも初めてでしたし、大勢の人の前で話すことも普段はありませんでした。ですので、どんな結果になるのかという楽しさと、大勢の人の前で話す緊張とが入り混じった複雑な気持ちでした。」

―― プレゼンテーションの練習はしましたか?

「はい。練習して、顧問の先生に見てもらいました。いかにわかりやすく伝えるか、という点でアドバイスをいただきました。本番では緊張して少し詰まってしまいましたが、話そうと思っていたことは話せました。90点ぐらいの出来かなと思います。」

―― U-20プログラミング・コンテスト実行委員からコメントをいただきましたが、感想はどうですか?

「コメントをいただけてありがたいです。部活の人以外に、こういった形でコメントをいただけたのは初めてのことです。『HSPで2,500行を超える分量を自分で細部にわたりプログラムしていて、苦労の跡が伺えました』というコメントをいただいたのですが、ここまでの規模で作ったのは『カーレース』が初めてだったので特にうれしかったです。デバッグが大変でしたから。」

―― 今まで部活で作られた作品はどれぐらいの規模だったのですか?

「500行ぐらいでした。」

―― 他には、『オプションが多く用意されている点が良いと思いました』というコメントもありました。

「オプションにこだわった部分をしっかり見ていただけたのだな、と思いました。」

『カーレース』のオプション設定画面

『カーレース』のオプション設定画面。自機の色や制限時間、ゲームパッドの使用などの設定以外にも、車同士の接触判定の有無、弾での攻撃の有無といった、ゲームルールに関わる部分についても設定が可能。

―― 『カーレース』では、プレイ前に多岐に渡る設定が可能ですね。なぜ多様なオプション設定にこだわったのでしょうか?

「設定できる項目が少ないと、上手い人と上手くない人の差がつきすぎてしまうからです。場合によっては、ハンデをつけることも必要だと考えました。」

―― それはなぜでしょうか?

「遊んでくれる人に楽しんでもらいたいからです。今回も『カーレース』を制作するにあたり、試作段階のものを部活の人たちに遊んでもらいましたが、『楽しかったよ』と言われるとすごく嬉しいです。ですから、『楽しい』という声がもっと聞きたくて、完成度を更に上げるために入選後も『カーレース』に改良を加えています。」

―― どのような改良をしましたか?

「もっと機能を追加できるのでは、と思い改良しました。例えば、応募時点の『カーレース』ではコースアウトした場合には自機がスタート地点に戻されてしまうので、プレイヤー同士の差がつきやすかったのですが、復活する地点をコースアウトした場所の近くに変更しました。こうすることで、接戦になりやすくなりました。」

―― 他にはありますか?

「応募時点ではBGMが無く効果音だけでしたが、遊ぶ人が好きな曲を流せるようにしました。他には、各種オプション設定を保存することができるようにしました。こうすることで、プレイする際に都度都度各種設定をする手間が省けます。」

―― そういった改良を加えた理由は、やはり?

「はい。遊んでくれる人に楽しんでもらうためです。今は、ゴースト機能を作っています。前回のプレイでの自機をコース上に表示させることで、自分と競うことができます。この機能ができれば、対戦相手がいなくても1人で遊ぶことができるようになります。」

―― 対戦相手がいないときにも楽しんでもらいたい、ということですね。応募段階では2,500行強のプログラムでしたが、そういった改良を加えた結果、今は何行ぐらいになっていますか?

「3,000行を超えました。」

―― 最終審査会当日、デモコーナーでは『カーレース』を実際に操作した一般来場者からのコメントも寄せられましたが、コメントをご覧になっていかがでしょうか。

「いただいたコメントの中に、『他にもソフトをたくさん作ってみると良いと思います。楽しく作るのが一番です。がんばってください。』というものがありました。『楽しく作るのが一番』というのは、僕もまったく同じ考えなので大事にしていきたいです。それと、実は今、新しいゲームも作り始めています。」

―― どんなゲームですか?

「シューティングゲームです。『カーレース』は休み時間の15分間にみんなで遊ぶことができるように作ったゲームですが、新作はじっくり時間をかけて攻略してもらうためのゲームです。」

―― なるほど。ジャンルが違うだけではなく、遊んでもらう状況も『カーレース』とは異なるゲームを作っているのですね。楽しみです。完成したら是非また応募してください。


前回インタビューした『ULO』の丸山さんもU-20プログラミング・コンテスト応募後に作品を改良されていましたが、その動機は「自分が一番作りたいもの、自分が欲しいものを作る」というものでした。それに対して、木下さんは「遊んでくれる人が楽しめるように」という気持ちから作品を改良していました。一見、正反対のようにも思えますが、どちらにも共通しているのは“明確な制作意図を持つこと”と“その制作意図をより的確に具現化するために、とことんこだわること”と“それを実現できる実行力”であると感じました。 どちらもまだU-20。ここからさらに成長を続けていきます。我が国のこれからのITを担う人材を、U-20プログラミング・コンテストはこれからも発掘していきたいと思います。

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