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入選者のその後

経済産業省商務情報政策局長賞作品
『ULO(Unidentified Launch Object)』インタビュー


第31回U-20プログラミング・コンテストにおいて、経済産業省商務情報政策局長賞を受賞した『ULO(Unidentified Launch Object)』。今回は『ULO』受賞の経緯やその後について、制作チームの顧問の先生・保護者の方・製作チーム代表者の方にお話をお伺いしました。

受賞作品紹介

「ULO(Unidentified Launch Object)」は、新潟コンピュータ専門学校 システムクリエーター科2年の丸山秀太さん・吉井洋也さん・外山隼人さんの3名から成るチーム、『my.t』(マイティ)による作品で、ホットスポット型のランチャーです。詳細は入選作品紹介のページをご覧ください。

※ランチャー:コンピュータにおけるプログラムを呼び出すためのソフトウェア。

写真『ULO(Unidentified Launch Object)』

第31回U-20プログラミング・コンテスト
経済産業省商務情報政策局長賞受賞作品
『ULO(Unidentified Launch Object)』

写真『my.t』

新潟コンピュータ専門学校 システムクリエーター科2年『my.t』

 

顧問インタビュー

『ULO』を制作したチーム、『my.t』(マイティ)が所属する新潟コンピュータ専門学校 システムクリエーター科2年の顧問である佐藤修一先生にお話をお伺いしました。

―― 貴校からは、例年たくさんの作品の応募を頂いていますが、学校側としてどのように取り組まれているのかお聞かせください。

「私たちが在籍しているシステム系学科では、2年生の前期(4〜8月)に授業の一環としてプログラミング作品を制作しています。できあがった作品をU-20プログラミング・コンテストに応募させていただきました。授業の課題以外にも目標があるということは、生徒のモチベーションを高めるためにも良いことだと思います。また、本校のゲーム系学科でも例年U-20プログラミング・コンテストに取り組んでおります。」
※ システム系学科は主にシステムエンジニアやネットワークエンジニアを目指す人のための学科で、MCP実習やCCNA実習、Javaプログラミングが主なカリキュラム。ゲーム系学科はゲームプログラマーやゲームプランナーを目指す人のための学科で、コンピュータシステムやゲームアルゴリズム、作品制作が主なカリキュラム。

―― 他にもプログラム作品提出型のコンテストがありますが、その中でなぜU-20プログラミング・コンテストなのでしょうか?

「門戸が広く開かれているからです。ジャンルを問わないところも良いです。自分達が作りたいものを作れば良いというのは大きな魅力です。」

―― ゲーム系学科の方を含め、貴校は長い間 連続で入賞されていますが、その秘訣といったものはありますか?

「長年連続入賞できている秘訣まではわかりかねますが、新潟コンピュータ専門学校としてはマンツーマン指導が行えるよう環境を整えています。」

―― 「環境を整えている」というのはどういったことでしょうか。

「学生からのホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)をしやすい環境作り、ということです。今回は学内サーバを活用して学生との情報共有を図りました。例えば、授業の終わりに必ず、その日の進捗状況や教師への質問事項を記入した報告書ファイルを提出することで、各チームの制作の進捗を把握したり、行き詰っている学生を発見したりすることができます。」

―― なるほど。

「そういった環境がなくても意欲的になんでも聞きに来てくれる生徒は、その都度対応していくうちに自ずと作品を完成できるでしょう。でも、中には問題や課題を自分の中で抱えがちな学生もいます。完全に抱え込んでしまう前に、まず状態をこちらが把握しておく。行き詰まってるな、と思ったときにはこちらからヒアリングに行くこともあります。また、報告書ファイルと一緒にソースファイルも提出しているので、教師が実際にソースを読んで、問題点を発見するといった使い方もできます。」

―― 指導されるにあたり、気をつけてらっしゃることはありますか?

「できるだけ自分の頭で悩んで考えてほしいので、答えそのものを与えずにヒントを出すに留めるようにしています。」

―― なるほど。

「少し話が逸れるかもしれませんが、システム系学科で勉強していると、どうしても就職のための資格取得という部分に意識が行きがちです。もちろん、それはそれで大切なことですが、スキルとして『モノづくり』につながっていきにくくなります。でも、本来 モノづくりに興味がある子たちが集まって来ているはずなのです。ですから、まずは1つ、モノを作ってもらいたい。自分だけの創作物を作ってもらいたい。その中で得たモノづくりに対する喜びや楽しさといったものが、この先スキルアップしていくためのモチベーションになるのです。私は、その手助けができればと思っています。」

―― 今回受賞された『my.t』チームに対しては、どのような指導をされましたか?

「丸山君が中心になって他のメンバーをうまく率いて、役割分担もうまくいっていましたから、特に苦労したという記憶はありません。ただ、仕上げの段階では、実際にプログラムが挙動する様を見ながら、第三者からの視点、『使う側』の視点からアドバイスをしました。学生のうちは、自分が作りたいものを作っている分、『作る側』の視野だけに留まってしまうということがありますから。」

―― 今回の受賞を受けて、『my.t』のみなさんには何か変化はありましたか?

「大きな自信になったのではないでしょうか。U-20プログラミング・コンテストに応募していなければ、教師やクラスメイトにしか見てもらえなかった作品が、第三者の目で審査され、評価されたのですから。
 それと、最終審査会に進んだという通知を受けて、プレゼンテーションの練習会を学校で行ったのですが、何人かの先生に見てもらい、様々な視点からアドバイスを受けました。そういったやりとりの中で、メンタル面も強くなったのではないでしょうか。
 受賞そのものというより、今回の一連の取り組みが自信や経験になって、就職を含めた今後に活きてくると思います。」

―― では、『my.t』チームの受賞は貴校に今後どのような影響を与えると思いますか?

「今まで、本校からの入賞作品はゲーム作品が中心でした。そのなかで、ゲーム以外の作品でも評価されたという事実はシステム系学科の学生にインパクトを与えたと思います。また後輩たちにとっても、『あの先輩に続け!』という感じで良い影響を与えるのではないでしょうか。」

―― 最後に、U-20プログラミング・コンテストに一言お願いします。

「これはお願いなのですが、もっと精力的なPRをお願いしたいです。U-20プログラミング・コンテストが、誰もが知っているコンテストになるように。受賞した子が、もっと胸を張れるように。
 それと、先ほどお話したことの繰り返しになる部分もありますが、U-20プログラミング・コンテストはとても有意義な場だと思います。20歳以下という制限がなければ私も応募したいぐらいです。好きなことがあって、それに打ち込んでいる子なら、『自分の実力を試したい』という願望は誰にでもあると思います。それを発揮できるU-20プログラミング・コンテストはとても有意義で、貴重だと思います。
 作品を応募する側としても、それに見合う作品を作らなければ、という意識で取り組んでいます。そういった意味では、今後もこのような機会を提供し続けていただけたら幸いです。」

保護者インタビュー

『ULO』は、新潟コンピュータ専門学校 システム科2年の丸山秀太さん・吉井洋也さん・外山隼人さんの3名から成るチーム、『my.t』(マイティ)による作品ですが、今回は代表者である丸山秀太さんの保護者の方にお話をお伺いしました。

―― U-20プログラミング・コンテストに入選してのご感想をお聞かせください。

「びっくりしております。こんなにすごいコンテストに入選したのかと改めて驚き、本人の頑張りが評価された事を本当に嬉しく思います。ありがとうございました。」

―― 作品作りに取り組まれている間、秀太さんに変化はありましたか?

「作品の取り組みの為に友達と出掛ける事が多くなり、熱心に取り組んでいるなあと思いました。また、受賞したことで自分に自信が持てるようになったのではないかと思います。」

―― 秀太さんがプログラミングに興味をもつよう、幼少期を含めて教育に気をつけたことはありますか?

「小学校の頃からインターネットに繋いだパソコンを触るようになりました。周囲からは『ネットの世界は何かと危ない』と言われたりもしましたが、私は息子をパソコンから遠ざけることはしませんでした。本人が夢中になれるものをみつけたのですから。ただ、親として、危険な使い方をしていないかチェックはしていたつもりです。」

―― 最後に、U-20プログラミング・コンテストに対してご要望などありましたら一言お願いします。

「入選という形がなければ、このコンテストの事など全く知らなかったことです。
 又、コンテストに入選した事で自信を持てるようになった息子のように、頑張っている人たちが成果を出せ、認めてもらえるこのようなコンテストがずっと続きますよう希望します。」

制作者インタビュー

『ULO』は、新潟コンピュータ専門学校 システム科2年の丸山秀太さん・吉井洋也さん・外山隼人さんの3名から成るチーム、『my.t』(マイティ)による作品ですが、今回は代表者である丸山秀太さんにお話をお伺いしました。

写真 丸山秀太さん

第31回U-20プログラミング・コンテスト最終審査会にて『ULO』のプレゼンテーションを行う丸山秀太さん

―― この度は入選、おめでとうございます。丸山さん自身が、そもそもプログラミングに興味を持ったのは、どのようなきっかけでしょうか?

「プログラミングに興味をもったのは、高校生のときです。小さい頃からパソコンには慣れ親しんでいたのですが、その頃は“使う側”でしかなく、高校生になって、『“作る側”に回ってみたい』という願望が出てきました。でも、私にとってプログラミングは敷居が高く、何から手をつけていいかわからないという印象で、自主的に始めることはしませんでした。実際プログラムに触れたのは新潟コンピュータ専門学校に入り、授業としてJavaを教わったのが初めてでした。」

―― 実際に触れてみて、感想はどうでしたか?

「元々モノづくりが好きで、想像していたとおり、プログラミングは楽しいものでした。」

―― その後、プログラミングについての知識や経験を重ねて、U-20プログラミング・コンテストに応募、見事受賞されたわけですが、周りの反響はどうでしたか?

「クラスのみんなも応募していましたので、クラスのみんなから『おめでとう』と言ってもらえました。」

―― 他には?

「自分から『こういうコンテストがあって入選した』って言うのって、なんだか気恥ずかしいというか、違うというか。そんな私の性格もあって、あまり人には言ってないです。もちろん『おめでとう』と言ってもらえたときは嬉しかったです。」

写真 吉井洋也さん・外山隼人

同最終審査会にて丸山さんのプレゼンテーションをサポートする吉井洋也さん・外山隼人さん

―― 親御さんの反応はどうでしたか?

「親が、U-20プログラミング・コンテストを知らなかったので・・・・。『U-20プログラミング・コンテストの最終審査会の通知が来たよ』って伝えても、親は『なにかのコンテストで残ったらしい』といった反応でした。『おめでとう』と言ってはもらえましたが、ピンと来ていないようでした。
 それが、最終審査会は東京の大きなホテルで開催された事や、大きな会場でたくさん人がいる前で経済産業省の方から表彰状をいただいた事を最終審査会から帰った後に話したら『そんなにすごいコンテストだったんだ』って(笑)。」

―― 親御さんは、喜びにタイムラグがあったのですね(笑)。

「はい。その後に『今回の受賞で自信ついたんじゃない?よかったね』と言ってくれました。」

―― チーム『my.t』として、吉井さんや外山さんと共に制作にあたられたわけですが、チームで制作するにあたり、難しかったことや良かったことはありますか?

「良かった点は、作業が同時進行でできるということです。並行して各自異なる作業をし、随時合わせていきました。また、その人ごとに得意な部分があるので、それを活かし合えることです。」

―― 逆に難しかったことは。

「スケジュール管理と、それぞれに得意とする部分が違うので、それを活かせるような役割分担をすることです。つまり、具体的に誰にどの作業をお願いしたらいいのか、ということです。しかし、その作業分担をしようにも時間軸に落としたとき、この作業をお願いしたいけれど、その作業を始めるには別の作業を終わらせないといけない、といった状況が出てきたりしてしまいました。」

―― それでも、その苦労を乗り越えて無事作品を完成させ、見事 受賞できてよかったですね。U-20プログラミング・コンテスト実行委員から、『ULO』に対するコメントをいただきましたが、感想はどうですか?

「まずは感謝の気持ちです。実行委員の皆様のような名のある方々に作品を見て貰いコメントをいただける機会なんて、そうそうないと思います。」

―― そうですね。

「それと、すごく参考になりました。たとえば、応募したときには『機能が少ないのではないか、もっと機能を豊富にしたほうが良かったのではないか』と不安に思っていたのですが、実行委員の方から『機能の割り切りが良いと思います』というコメントをいただき、要素を減らすのも時には長所になり得るという事に気づけました。」

―― 『ULO』はデスクトップランチャーですが、遊びの要素として“おみくじ”も実装されていましたね。そういった要素や機能をもっと多くしたほうが良かったのでは、という不安を持っていた、ということですね。『機能の割り切りが良い』という実行委員からのコメントは、ランチャーとしての機能を全うしたことに対しての評価だと思います。

「デザインについての評価もいただけてうれしいです。『かっこいい』と言っていただけたことがうれしかったです。私はまさに『かっこいい』ランチャーを作りたかったので、それが認めてもらえた!と思いました。」

『ULO』の動き1  『ULO』の動き2  『ULO』の動き3

『ULO』は、閉じた状態と開いた状態を、なめらかなアニメーションで繋いでいる。アニメーションしている間はSFを連想させる効果音が鳴り、開く際の音と閉じる際の音を使い分けている。

―― 『ULO』は、動きと音にこだわっていますよね。

「はい。『ファイル整理ソフト』や『電卓』といったシステム的なプログラムしか作ったことが無かったので、今回は見栄えを重視したものを作りたいと思いました。ウィンドウのデザインをしたり、画像を描いたり、初めてする作業が多かったです。」

―― 見栄えを重視したものを作ろうと考えたのは、U-20プログラミング・コンテストに応募するための作品だからですか?

「いいえ。実を言うと、何を作るかという段階では、U-20プログラミング・コンテストに応募することはあまり念頭に置いていませんでした。それまで学校の授業でプログラムを作るにあたり、自分が一番作りたいものを作るというスタンスでやってきたので、今回もそれで行こうと思いました。そこでまず、今まで作ったことのない、見た目にこだわったものを作りたいと考えました。次に機能としては、自分が使いやすいデスクトップランチャーが欲しいな、と思い『この二つの要素を合わせたら丁度良い』ということで決まりました。見た目を重視したランチャーは、なかなかないので。」

―― コンテストは関係なく、自分が一番作りたいもの、自分が欲しいものをこだわって作ったら、結果 受賞した、ということですね。

「そう言われると、少し恥ずかしいですが・・・。」

―― 最終審査会当日、ロビーのデモ展示コーナーでは一般来場者からのコメントも投函されました。コメントを読んで、どうでしたか?

「『同時に複数起動してしまうのを防げると良い』というコメントがあったのですが、これは盲点でした。自分で使っているだけだと、1回起動したら もう1つ起動しようなんて思いもよりませんから。こちらの想定外の操作をする人の事も考えないといけないんだな、と思いました。『使う側の視点』からの意見をいただけたということだと思います。いろんな方からコメントをいただけて、参考になりました。」

―― 他のコメントで印象に残ったものはありますか?

「『アニメーションしていない間のCPU使用時間を少なくすると、もっと良くなると思います』というコメントは、自分でも思っていたことなので『こういうところもしっかり見られているんだ』と思いました。『おっしゃるとおり』という感じでした。」

―― 的を射ている、と。

「はい。常駐型のプログラムなので、この部分は重要です。でも、実は8月に応募した後に、その点は改善しています。」

―― 実行委員による審査は、応募締め切りである8月時点の作品に対してなされたわけですが、丸山さんの手元にあるプログラムには改善を施している、と。

「はい。そのほかにも、当初は画面左側にしかランチャーを置けませんでしたが、使い勝手を考えて画面右側にも置けるようにしたり、ソースコードの整理も行いました。複数同時起動については、今後改善していきたいです。」

―― 他の人に『ULO』を使ってもらいましたか? 例えば、WEB上で公開するとか。

「WEB上での公開ですか?どうでしょう。そもそもの動機が、自分が欲しいものを作る、ということでしたから。自分にとって使い勝手が良いように改善していくことは今後もあると思いますが、他の人に使ってもらうために公開する、というのは今のところ考えていないです。するとしても、もっとアプリケーションとしての完成度を高めてからになると思います。」

―― 最後に、U-20プログラミング・コンテストに一言お願いします。

「こういったコンテストは、なかなかないと思います。何を作って応募してもいいし、20歳以下なら誰でも応募できます。今回、中学生の方の作品も受賞していました。しかも国が主催ということもあり、実に貴重な場だと思います。今後も続けていってほしいです。あ、あと」

―― あと?

「『U-20プログラミング・コンテスト』って言ったら、誰にでもすぐわかってもらえるといいです・・・・・。」

―― 親御さんが実感をもって喜んでいただけるタイムラグがなくなるぐらいに。

「そうですね(笑)」


「コンテストに出すために作る」ではなく、「自分が一番作りたいもの、自分が欲しいものを作る」ことが動機である丸山さんにとって、応募した後も改良を重ねていく姿勢は、極々自然なものなのかもしれません。次世代ITを担うことになる若年層に、丸山さんのような方がいるという事実に、頼もしさを感じました。U-20プログラミング・コンテストは今後も丸山さんのような逸材を発掘していきたいと思います。

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